アセビ










「俺と、来てくれないか。オスカー」



アイクにそう言われたのはあれだけの大陸全土を巻き込んだ大規模な女神との戦いが終息して間もなくの事だった。
あまりに突然で、全く予想だにしていなかった事で、アイクに対してすぐに返事は出来るものではなかった。
幸いにも、アイクはミストとボーレの結婚式の後旅立つつもりだと言っていたが。彼等の結婚式の予定は一ヶ月後に決まっていた。
勿論その時は庸兵団総出で祝うつもりなのだが。

弟達に関しては、ボーレはミストと結婚すれば上手くやっていけるだろうし、ヨファはこれからシノンらと共にグレイル庸兵団を続けていくことだろう。
それにこれまでの経験から、見違えるほどに成長してくれたのだから、もうこれ以上は関わらなくとも彼等は大人になっていけると信じている。
自身に関してはエリンシア女王や将軍であるジョフレから再び王宮騎士団に戻ってはくれないかとの要請があったが、それもまた、一つの選択肢に過ぎない。
クリミアの王宮騎士団に属している好敵手のケビンには、どうするにせよいずれ手紙を出すつもりでいる。






「…アイク。それは私でなくて、ライやセネリオに言うべきじゃないか?」


「いや。それも考えたが、やっぱり俺はあんたを連れていきたい」



気が付けば、一番傍で戦い続けてきて、傍で守り合っていて。
気が付けば、あんたの背中ばっかり見ていた気がする。
アイクの言葉は、オスカーの胸を深く付き抜けた。同時に、悟った。アイクは、覚悟と隣り合わせでこの大陸を離れるつもりなのだ。
そしてそれは、もう二度とこの場所に、故郷クリミアに、戻ってはこないということ。
それはオスカーにとっては勿論、アイク自身にも後に残す想いがあるだろう庸兵団の皆、ラグズの戦友達、王宮の大切な仲間。それでも、アイクは行きたいんだと、言った。
オスカーを、共に連れて。





「この事は俺とあんただけの秘密にしたいんだ」

「それはいいけど…本当に?後悔はないのかい?」

「それもきっと…あんたが居てくれたら、過去を振り返らずに進める気がする」




―――だから、あんたに傍に、居てほしい。

俺に、勇気を、分けてくれないか……?




「まるでプロポーズするみたいな言葉だね」
「そうでもいい。あんたがそれでもいいなら」
「アイクが言うと嘘に聞こえないな…」
「俺はオスカーが好きだ。だから、あんたと一緒に居たい」
「アイク……」


いつの間にか、同等の背丈になって重なる目線。
アイクの父、グレイルがまだ健在していた頃の、あの初任務の時のアイクの姿。まだ彼は背がそれ程高くなくて、まだ幼さを残していた。
それなのに、このたった3年間の間に、背も、心も、力も。
全てが、重なり合うように。


「…分かったよ、アイク」
「オスカー…」
「望むなら、君とどこまでも在ろう」
「ああ、どこまでも」








そう決めてから、あっという間に日は過ぎて、結婚式も、秘密の旅の支度も、流れる様に過ぎていって。
庸兵団の皆とも別れを告げることもなく。


「アイク、もう…いいのかい」
「ああ。俺にはあんたが居るからな。」
そう言って、アイクは砦に背を向けた。



早朝の蒼穹は高く、日は柔らかく二人を照らしていた。







End


アイオスはラストでこうでもいい.......!!と密かに考えています本気です←
アイクはオスカーにプロポーズしてくれちゃっても か ま わ な い の よ (黙れ
オスカーはアイクの願いには断れなさそうで...っ 2011,6,15



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